「学力の経済学」の評価(レビュー)・感想
教育経済学者の中室牧子さんが書いた「学力」の経済学という本を読んだ評価(レビュー)・感想に関する記事です。「ゲームは子どもに悪影響?」「ご褒美で釣るのっていけない?」といった、子育てに悩むお母さんたちにとっては気になる情報を統計学を用いて読み解こうという本ですね。読書週間の無い私が読んだらだいたい4時間程度で読めました。
学力の経済学の評価(レビュー)
学力の経済学は、学術書として手に取った私にとってはいまいちな本でした。しかし、あまり細かい事を気にせずに、子育てのハウツー本として学力の経済学を読むお母さん達にとっては役に立つ知識がいくつか掲載されていますので、「ゲームは子供に悪影響を与えるのか?」「ご褒美で釣るのっていけないの?」といった悩みを抱えている方は、ぜひ学力の経済学を読んでみてください。
活字が苦手な方向けに、漫画も用意しています。
学力の経済学の感想
学力の経済学の内容としては「良いか悪いかはエビデンスに基づいて考えよう」と「中村牧子氏の政府の教育方針に対する批判」が主です。
良いか悪いかはエビデンスに基づいて考える(+)
学力の経済学で伝えたい本当の主題は「良いか悪いかはエビデンスに基づいて考えよう」という事だと思っています。例えば、ゲームは子供に悪影響なのか。そんな事を実証するデータは無いのです。
確かに毎日部屋でゲームばかりしていれば、学習時間が足りずに成績は下がります。しかし、それはゲームが子供に悪影響を与えているのか、そもそもゲームが無くてもその子は自主学習をしないのではないか。そこに相関関係はあっても因果関係は無い。よって、ゲームそのものが子供に悪影響を与えることは無く、1日1時間程度の息抜きであれば特に問題は無いであろう。
といった形で、エビデンスの無いものを信じてはいかんという考えを説いてくれています。この試みは面白く、私としてもそのエビデンスをどのように取得しているかと気になり学力の経済学を手に取ったわけです。
参考にするエビデンスにセンスがない(ー)
しかし、本の最後に中村牧子氏自身もおっしゃってますが、残念ながら中村牧子氏の持ってくるエビデンスは、日本では無く海外の情報で、それも1990年代のものだったりと、統計としては成り立っていても、現在に通ずるものなのかといえばイマイチな情報なんですよね。
また、中村氏本人の実験や体験結果がほとんどなく、それこそキュレーション記事のように他者の実験結果について論ずるだけという(教育の成果を実験するには干支が2~4回転する程度には時間がかかるため仕方ない話ですが)。
概念の名前を知れた(+)
良かったところといえば、教育の収益率のような、私の知らなかった言葉を学べたことは良かったです。本の良いところは、購入して読んでいるうちに知らない単語が出てくるおかげで、調べる内容が増えることですね。
政府の統計方針や教育方針に対する批判(ー)
中村牧子氏の本なので、好きに書いてくれれば良いのですが、4章の終盤以降は少人数学級制に対する批判や、統計調査を学者が一般に解放していない事を、批判しているような内容ばかりで、この本の読者に対する配慮に欠けているなと感じました。
ひょっとしたら帯の内容を中村牧子氏は知らないのかも知れませんが、この本を手に取った読者はそのような中村牧子氏の政府批判に興味は無いはずです。
まとめ
学力の経済学は私にとってはイマイチな本でしたが、中村牧子氏の政府批判や中途半端なエビデンスに興味のある方にとっては面白いのかも知れません。また、エビデンスのない情報に振り回される事に対する警鐘は必要でしょう。
もし、あなたが学術書として読むのであれば、オススメはできませんが、子育てのハウツー本として読むのであれば、役に立つ知識はいくつかありました。
では、ここまで読んでくれてありがとうございました。